「労働安全衛生法違反」として罰則の対象
「アスベスト(石綿)」に関する調査や作業において適切な対応を怠ると、労働安全衛生法(安衛法)違反として罰則の対象となることがあります。
これは現場で働く労働者の健康を守るために定められており、大気汚染防止法とは別の視点で重要です。
労働安全衛生法におけるアスベスト関連の義務
労働者にアスベストばく露の恐れがある作業を行う場合、事業者には以下の義務があります。
| 主な義務内容 | 概要 |
|---|---|
| 事前調査の実施 | アスベスト含有建材の使用有無を作業前に調査し、労働者のばく露を防止 |
| 作業計画の届出 | 一定のアスベスト除去作業等については労働基準監督署へ作業計画を届け出(原則14日前) |
| 保護具の使用 | 作業員に防じんマスクや保護服の着用を義務付ける |
| 隔離・囲いの措置 | アスベストの飛散を防ぐために作業場所を囲い込み、負圧除じん装置などを使用 |
| 作業場の掲示と記録保存 | アスベスト作業であることを掲示し、作業記録を30年間保存する義務あり |
| 作業者への特別教育 | アスベスト作業に従事させる者には特別教育の受講が義務(事業者責任) |
違反した場合の罰則(労働安全衛生法)
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| アスベスト事前調査を怠った | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(第119条) |
| 作業計画の届出を怠った | 50万円以下の罰金(第120条) |
| 保護具を着用させなかった | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 特別教育を実施しなかった | 50万円以下の罰金 |
注意点
- 大気汚染防止法は「環境への飛散」を規制対象としていますが、労働安全衛生法は「作業者の健康保護」が目的です。
- つまり、アスベストに関する工事を行う際には、両方の法律に基づいた対応が必要になります。
実務上のよくある違反例
- 解体業者が「建材に石綿が含まれていることを知らなかった」として事前調査をせずに作業開始
- 作業員にマスクの着用や囲い込みをせず、そのまま吹付け材の撤去を行った
- 教育訓練を受けていない作業員を現場に投入した
これらはすべて労働基準監督署の調査対象となり、書類送検や罰金命令の可能性があります。




